サービスの概要
PropTech 企業 Polygant は、サウジアラビアと UAE の不動産プロジェクトを一元的に閲覧できる公開型マップサービス「RE.Platform Explorer」を 2026 年 3 月にローンチしたと発表した。同プラットフォームは各プロジェクトの所在地、ユニットタイプ、価格帯、建設ステータス、想定 ROI を英語で構造化して表示し、国際的な投資家やバイヤーが検索・比較できるインフラとして設計されているとされる。
サウジ不動産市場では、多くのデベロッパーが英語対応のウェブサイトを持たず、標準化された物件リスティングやリアルタイムの空室データを海外向けに公開していないという現状の課題が背景にあると指摘されている。
CEO の Stan Chernukhin 氏は、サウジの規制変更は構造的変化であり、デジタルプレゼンスを確立したデベロッパーが国際資本を呼び込む上で有利になるとの見方を示している(RE.Platform 公式)。RE.Platform Explorer は消費者向けポータルではなく、デベロッパー向けのデジタルインフラという位置づけとされる。
REGA(サウジ不動産総局)も PropTech をセクター変革の重要な柱として位置づけていると報じられている。
外国人不動産所有法との関係
RE.Platform Explorer のリリースが戦略的に位置づけられる背景として、2026 年 1 月 22 日に施行された「非サウジ人による不動産所有法」がある。2000 年制定の旧法を全面的に置き換えたこの新法は、外国人の個人・法人・ファンドに対し、閣議決定で指定される「地理的区域」内での不動産所有権、用益権、地役権の取得を認めるものとされる。各区域ごとに外国人の所有上限、用益権の最長期間、取得条件が REGA の提案に基づき設定されると報じられている。
新法の重要な区分として、「外国法人」「外国株主を持つサウジ国内法人(非上場)」「上場企業・投資ファンド」の三類型が設けられていると報じられている。外国株主を持つサウジ国内法人は「非サウジ人」に該当しないため、指定区域内および区域外での取得範囲が異なるとされる。
制度ポイント
- REGA 所有手数料:4 都市内(リヤド・マッカ・マディーナ・ジェッダ)で 2%(法律上の上限 5%)、4 都市外は 0%。RETT(5%)および VAT とは別建て
- 不動産登記への登録が権利の有効要件と報じられている
- 施行規則は 2026 年 6 月 23 日に閣議で承認され、同年 7 月 3 日に公布された。指定地理的区域も併せて承認され、REGA の専用プラットフォームで公開されている
市場データ
不動産市場全体の収益規模、FDI 流入額、PropTech 市場の想定成長率については、複数の調査機関が推計を公表している。ただし、機関ごとに算出方法・対象範囲・参照年が異なり、単一の数値で断定できないため、本記事では具体値の提示を控える。実際の投資検討にあたっては、以下の一次資料を直接参照されたい。
- Saudi Central Bank (SAMA) の四半期・年次公表資料
- GASTAT(General Authority for Statistics)の不動産統計
- Ministry of Investment (MISA) の FDI 統計
- Knight Frank / JLL / Savills など主要調査機関の Saudi Arabia レポート(各社の方法論に留意)
実務上の留意点
規制の空白期間
施行規則は 2026 年 7 月 3 日に公布され、地理的区域も併せて承認されました。REGA の専用プラットフォームで個別区域の内容が公開されている。制度が新しいため、運用の詳細や解釈は今後変更される可能性がある。
取引コスト
非サウジ人による不動産の処分には、REGA が徴収する所有手数料が課される。施行規則が定める適用料率は 2% であり、対象はリヤド・マッカ・マディーナ・ジェッダの 4 都市内に所在する物件に限られる。法律上の上限は処分価額の 5% とされており、規則により将来引き上げられる可能性がある。これは RETT(5%)および VAT とは別個の負担であり、4 都市内の取引では RETT と合算して 7% 相当となる。4 都市外の物件の処分には 0% が適用されるほか、相続、公用収用、確定判決による処分など、0% が適用される類型が定められている。取得検討時には RETT 5% と併せて試算する。周辺市場との比較検討では、税制・登録料の水準を並列で確認することが有効である。
保有主体の選定
外国株主を持つ法人の利益には法人所得税の適用があると報じられている。保有構造の設計(サウジ国内法人の利用、上場ファンド経由など)が税務効率に影響する。
日本の投資家にとっての実務論点
- プロジェクト調査ツールとして:RE.Platform Explorer は英語対応のため、日本からでもサウジ不動産プロジェクトの所在地・価格情報の事前調査ツールとして利用できるとされる
- サウジ国内法人経由の間接保有:指定区域外やメッカ・メディナ圏の物件へのアクセス経路として、サウジ国内法人(LLC)を設立して不動産を取得する構造も選択肢とされる
- REGA 指定区域の確認:投資エリアの絞り込みには REGA の専用プラットフォームでの確認が前提となる
日本の居住者・内国法人は全世界所得課税の対象となるため、サウジで発生する賃料収入・売却益についても日本国内で申告・課税の対象になる。 日サ租税条約の適用範囲、外国税額控除の可否は税理士等の有資格専門家に確認されたい。
中長期の位置づけ
各種報道が指摘するように、2034 年 FIFA ワールドカップに向けたインフラ整備、NEOM 等のギガプロジェクトの進捗、リヤドの多国籍企業集積プログラムなどが、住宅・商業不動産の両セグメントで需要要因となる可能性がある。RE.Platform Explorer のようなデータプラットフォームが市場の透明性を高め、クロスボーダー取引のハードルを下げる方向で機能するとの見方が示されている。制度の詳細は流動的な段階にあるため、最新の公式情報と現地専門家への相談を前提とした段階的なアプローチが求められる。