制度変更の要点

サウジアラビア資本市場庁(CMA)は 2026 年 1 月 6 日、2026 年 2 月 1 日より、すべての外国人投資家がサウジアラビア株式市場(Tadawul)のメインマーケットに直接投資できるようになると発表した。これにより、従来の「適格外国機関投資家(QFI)」制度が廃止され、個人・法人を問わず、非居住外国人がサウジ株式に直接アクセス可能になるとされている。

外国人投資家の保有額・地域別の内訳は Saudi Exchange のファクトブックで四半期ごとに公表されている。

この記事で整理する項目

  • 2026 年 2 月 1 日以降の制度変更の要点
  • 外国人投資家が直接投資する場合の想定手続き
  • TASI・MT30 の指数構造
  • 時価総額上位 10 社の概要(銘柄推奨ではない)
  • 保有上限(個別 10%・全体 49%)と留意点

制度変更の対照

2026 年 1 月 31 日までの制度

  • 外国人投資家は「適格外国機関投資家(QFI)」資格を要していたと報じられている
  • 個人投資家は原則として直接投資できず、スワップ契約経由の間接投資が中心であった
  • QFI 資格は運用資産や運用実績等の要件を伴っていた

2026 年 2 月 1 日以降の制度

  • QFI 制度が廃止され、資格要件を経ずに参加可能になるとされている
  • 個人・法人を問わず直接投資が可能になると発表されている
  • スワップ契約を経由しない直接保有が可能となると報じられている
  • 非居住外国人も対象になるとされている

保有上限は維持されると発表されている。

  • 個別銘柄における単一投資家の上限:10%
  • 個別銘柄における外国人合計の上限:49%

制度の一次資料は、CMA が公表する「Rules for Foreign Investment in Securities」および同 FAQ を参照されたい。

背景

サウジアラビアは Vision 2030 の枠組みで、外国直接投資(FDI)の拡大と国際金融ハブ化を目指しているとされる。今回の制度変更は、その一連の政策の一部として位置づけられていると各種資料で報じられている。将来の資金流入量に関しては、公表資料に基づく想定として提示されており、実現を保証するものではない。

市場と指数の構造

Tadawul は中東地域の主要な株式市場のひとつと位置づけられる。主要指数は次のとおり整理される。

項目 TASI(Tadawul All Share Index) MT30(MSCI Tadawul 30 Index)
対象銘柄 Tadawul 上場の全銘柄 流動性・時価総額上位 30 銘柄
算出主体 サウジ取引所 サウジ取引所 × MSCI 共同開発
ウェイト 時価総額加重平均(上限なし) 時価総額加重平均(1 銘柄 15% 上限)
用途 市場全体のベンチマーク ETF・デリバティブの基礎指数

上場企業数、市場時価総額、平均出来高などの具体数値は、Saudi Exchange のファクトブック(四半期公表)を参照されたい。

TASI 指数の推移
時点・値ともに未確定
Data pending
Chart placeholder — 実データ入荷後に描画
Source[出典確認中]

外国人投資家の想定アクセス経路

経路 A:海外 ETF 経由(間接投資)

日本の証券会社から購入可能な米国上場 ETF などを通じて、間接的にサウジ株式市場へアクセスする経路がある。個別銘柄の選択はできない一方、既存の証券口座で参加できる利点がある。ETF の経費率、二重課税の可能性、指数構成の偏りに留意する必要がある。代表的な ETF の一次情報は各運用会社の目論見書を参照されたい。

経路 B:Tadawul への直接投資(2026 年 2 月 1 日以降)

海外証券会社の口座を通じ、または現地証券会社を通じて、Tadawul の個別銘柄に直接投資する経路が想定される。想定される実務手順の概要は次のとおりである。

  1. 取扱ブローカーの選定
  2. 口座開設と KYC(本人確認)。Edaa(サウジ証券保管機関)への登録が必要とされる場合がある
  3. 投資口座への資金送金(SAR は米ドルペッグ制と報じられている)
  4. 銘柄選定と注文(外資保有枠の空き状況の確認を含む)
  5. 保有・配当受取・売却

具体的な手数料水準、口座維持コスト、配当金受取フローは、各証券会社の公表資料により大きく異なる。実務では現地の有資格実務家への確認を前提とされたい。

サウジ側の課税と日本側の課税

サウジアラビア国内における配当・キャピタルゲイン課税の適用範囲については、CMA および ZATCA の公表資料を確認する必要がある。標準税率、非居住者向けの取扱い、日サ租税条約の適用範囲については、本サイトの制度・税務カテゴリで別途整理する予定である。

日本の居住者・法人は、全世界所得課税の対象となるため、サウジで発生する配当・キャピタルゲインについても日本国内で申告・課税の対象になる。 具体的な取扱い(分離課税か総合課税か、外国税額控除の適用範囲)は個別事案により異なるため、必ず税理士等の有資格専門家に確認されたい。

時価総額上位 10 社の概要

以下は Saudi Exchange の公表情報に基づいて、時価総額上位に位置づけられる代表的企業を整理したものである。個別銘柄の売買を推奨するものではなく、あくまで市場構造を把握する上での参考情報として提示する。時価総額順位や構成銘柄は時点によって変動するため、最新の Saudi Exchange 公表情報を確認されたい。

業種区分 主要企業(一例) 位置づけ
エネルギー Saudi Aramco サウジ最大手のエネルギー企業として報じられている
通信 stc(Saudi Telecom Company) 通信インフラの主要事業者
素材 SABIC 総合化学メーカーとして知られる
銀行 Saudi National Bank 大手商業銀行のひとつ
銀行 Al Rajhi Bank イスラム金融を主体とする大手銀行

その他の上位企業および具体の時価総額順位・数値については、Saudi Exchange 公表資料での確認を前提とする。

参入における留意点

  • 外資保有枠:個別 10%、全体 49% の上限を超えると新規取得ができない銘柄がある
  • カストディリスク:証券会社・保管会社の信用リスクを、契約前に確認する
  • 為替リスク:SAR は米ドルペッグ制とされているが、SAR/JPY は円ドルの動向に連動する
  • 流動性リスク:中小型株は売買が成立しにくい場合がある
  • 情報開示:英語での情報開示が限定的な企業もあると報じられている
  • 政策・規制リスク:Vision 2030 の進捗、政策変更が市場に影響しうる

まとめ

2026 年 2 月 1 日の QFI 廃止は、非居住外国人による Tadawul への直接アクセスを容易にする方向の制度変更として発表されている。実務での適用範囲や税務上の取扱いは、施行後の運用と施行細則により明確化される部分が残る。日本の居住者・法人が参加を検討する際は、サウジ側の制度と日本側の課税の双方について、専門家の確認を経ることが前提となる。