状況の整理
2026 年 3 月、中東地域では米イラン間の軍事的緊張が高まった局面があり、周辺市場に影響が及んだと報じられている。米軍によるイラン施設への攻撃、イランによる周辺国資産への反撃、ホルムズ海峡経由のタンカー輸送の停滞などが伝えられ、原油価格は一時 100 米ドル / バレル を超える水準に達したとされる。国際エネルギー機関(IEA)は戦略備蓄の放出を決定したと報じられているが、規模と期間について市場の見方は分かれた。具体の放出量は IEA の Emergency Response 公表を参照されたい。
このような局面下で、サウジアラビアの主要株価指数である Tadawul All Share Index(TASI)が、他の周辺市場と異なる推移を示したと各種報道が伝えている。
市場推移
Bloomberg 等の報道によれば、緊張の初期に湾岸諸国の株式市場は総じて下落を記録し、TASI も 2026 年 3 月 1 日に相応の下落幅を示したとされる。その後、TASI は数営業日の上昇を経て、緊張発生前の水準を上回って推移する局面があったと報じられている。3 月 12 日時点で TASI は約 10,893 ポイントで推移し、緊張発生時比較でプラスの推移となったとの報道がある。
一方、周辺の他市場(例:Dubai Financial Market Index)は、同期間で相応の下落率を記録したと伝えられている。同じ湾岸地域内でも市場間で推移が分かれた点が特徴として整理される。
過去の一時点における推移は、将来の同種局面での挙動を保証するものではない。以下の要因分析は、公表報道に基づく整理として扱われたい。
市場推移を支えた要因の整理
各種報道および調査機関の分析は、複数の構造的要因を指摘している。
国内投資家の存在
Bloomberg の分析では、下落局面で国内投資家が買い支えに入ったと指摘されている。サウジアラビアの株式市場は国内機関投資家と個人投資家の比率が相対的に高い構造を持つと報じられており、外国人資金の急激な流出に対する感応度が周辺市場と異なる可能性がある。
原油価格上昇の影響
緊張に伴う供給懸念から原油価格が上昇し、産油国であるサウジアラビアの国家歳入および主要企業(特に Saudi Aramco)の収益に一定の追い風となったと報じられている。Saudi Aramco の株価は同期間で年初来上昇を維持したとされる。
経済多角化の進展
Vision 2030 のもとで非石油部門の GDP 寄与が拡大していると報じられている。IMF の 2026 年サウジ経済成長率の予測値は IMF World Economic Outlook を参照されたい。
信用格付けの安定
S&P Global Ratings は 2026 年 3 月、サウジアラビアの信用格付けを A+/A-1 で据え置き、見通しを「安定的」と確認したと発表されている(公表日詳細は S&P Global Ratings の公表資料で確認)。
外国人投資規制の撤廃
サウジ資本市場庁(CMA)は 2026 年 2 月 1 日、QFI(適格外国機関投資家)制度を撤廃し、外国人投資家のメインマーケットへの直接アクセスを可能にしたと発表した。この制度変更は、市場の流動性の観点で構造的な追い風になりうるとの見方がある。
参考データ
| 指標 | 状況(2026 年 3 月中旬時点) |
|---|---|
| TASI | 約 10,893 ポイント |
| Dubai Financial Market | 同期間で下落したとの報道あり(具体値は DFM 公表を参照) |
| Saudi Aramco 年初来 | 年初来の推移は Saudi Aramco の IR を参照 |
| ブレント原油 | ICE Brent 先物の日次値を参照 |
| S&P サウジ信用格付け | A+(安定的) |
数値は 2026 年 3 月中旬時点の一時点データであり、以降の推移を保証するものではない。
日本の投資家にとっての実務論点
地政学リスクの一律評価は困難
同じ地域内でも、市場ごとに地政学リスクへの感応度が異なる。国の経済構造、投資家構成、財政状態、エネルギー政策における立ち位置によって、リスク耐性は異なるとの見方が示されている。
アクセス経路の確認
2026 年 2 月以降、日本の投資家も Tadawul メインマーケットへの直接投資が制度上可能になったと報じられている。実務上は、対応証券会社での口座開設、為替の取り扱い、送金手段、税務書類の準備など、事前確認事項が多岐にわたる。
為替の取り扱い
SAR は米ドルにペッグされていると報じられている。SAR/JPY の変動は実質的に USD/JPY に連動する構造とされる。円建てでの評価では為替の変動を別途考慮する必要がある。
サウジ側と日本側の課税
サウジアラビア国内における配当・キャピタルゲイン課税の適用範囲は、CMA および ZATCA の公表資料の確認を前提とする。日本の居住者・内国法人は全世界所得課税の対象となるため、サウジで発生する配当・キャピタルゲインについても日本国内で申告・課税の対象になる。 日サ租税条約の適用範囲、外国税額控除の可否は税理士等の有資格専門家に確認されたい。
情報収集の枠組み
地政学リスクが高まる局面では、日々の情報更新が意思決定に影響する。政府公表資料、公認された調査機関、複数の報道機関を組み合わせた情報収集の枠組みを事前に整えることが実務上の前提となる。
まとめ
2026 年 3 月局面における Tadawul 指数の推移は、国内投資家の存在、原油価格の動き、経済多角化の進展、信用格付けの安定、QFI 撤廃といった複数の要因が組み合わさった結果として報じられている。過去の一局面での推移は、将来の同種局面での市場挙動を保証するものではない。日本の投資家が参加を検討する際は、制度上のアクセス経路、為替、日本側の課税、情報収集の枠組みを事前に整理することが前提となる。